昇圧型DCブースト回路によるLED駆動電圧の発生

                             by nobcha @2011

 

1.PICマイコンで何故昇圧型DCブースト回路を使うのか

 nobchaの電子回路日記の実験の中では、PICを使い白色LEDを光らせましょうという題目があります。その組み合わせにおいて必要電圧条件は次になります。

@作り上げたものをバッテリーで動かしたい。ニッケル水素の単三電池を2本と言うのが手軽。従って2.4V〜2.7VぐらいでLED駆動したいということになります。

APIC電源電圧は2〜5.5Vというのが一般的。(最近1.8V〜の製品が出てきましたが)

B光らせたい白色高輝度LEDのVfは2.4V〜となっており、TRでON/OFFスイッチするとVbe(SAT)が0.5V〜必要となり、LEDを光らせるための電源電圧は3V以上は必要。

CPICマイコンのソフトで明るさとか点滅制御したいのでLEDをスイッチング駆動したい。

 というような事情から、電池電源2.6VをPIC電源に使用して、LED用には昇圧する回路としてDCブースト回路を採用します。

 

2.昇圧型DCブースト回路の構成

 インダクタをショートして、開放するとコイルの磁界に蓄えられたエネルギーにより逆起電力が発生します。リレーを駆動する時の注意事項としてご存知の現象です。

 DCスースト回路では、電池に直列につないだインダクターをTRでショートし、次のタイミングで開放すると、インダクターに逆起電力が発生し、それが電池電圧に重なることで約2倍の電圧が発生します。

 PICのポートの耐電圧はVdd+0.3V(PIC12F629/675)となっています。ですので、インダクタのスイッチはトランジスターを介して行います。PICのポートでトランジスターをスイッチング駆動すると出力電圧は上図のようになるはずです。

 

3.LTSPICEで確かめる

 回路を組んで実験する前に回路シュミレータで確かめます。LTSPICEを使うとインダクタの容量やスイッチング時間などを色々と変えてみてどんな電圧が発生するかをPC上で確かめられます。

 電源電圧2.6Vで100μHのインダクタを使って、2SC1815を接続2μS間ショート、19μS間開放するという条件でシュミレーションしました。ジャンク箱に定番トランジスター2SC2458をたくさん持っていますが、LTSPICEのモデルにはありません。そこで、同じメーカで2SC2458の互換先行品である2SC1815を用いることにしました。

 2SC1815のSPICEモデルは数理設計研究所のWEBに公開されており、そちらからコピペで使用します。

 LEDは特に検討もせず、LTSPICEに組み込まれているものを利用しました。従って白色LEDでなく、従来型LEDでVfは低い可能性があります。

 100μHはたまたまアキバで買った抵抗器みたいなケースに入った手持ちがあったのでそれを実験時に利用しようと思って採用しました。LTSPICEでインダクタを指定する時には直列抵抗値も入力してください。値はテスターで実物を測るなどしてもよいし、メノコ値では3Ωぐらいです。これを入れないとシミュレーションが収束しないことがあります。

 次にスイッチングの周波数ですが、PICが4MHzクロックなら1インストラクションが1μSになります。50%デューティでON・OFFしても最大500kHzまでです。もう一つ情報としては100μH程度のインダクタをTRを使ったブロッキングオシレータ型LED駆動回路に使用した際、大体数十kHzぐらいで発振し、30mAクラスLEDをピーク電流100mA以内で使えました。ということで1μS間ONで20μS間OFFという50kHzぐらいで駆動することにします。

 ためしにシミュレーションするとLEDに電流が流れなくなるところでリンギングが発生することがわかりました。ノイズが多くなるものいやなので、LED並列に抵抗4.7kオームを気休めに入れてリンギングを少し抑えました。

 青色のトレースがLED2本に流れる電流、緑が電圧です。

 シミュレーションではLED電流が40mAとなり、2μSぐらい3角波状に流れています。実際にこの条件でブレッドボード実験すると高輝度LEDが煌煌と点灯し、電池の消費電流は4〜5mA程度となります。

 LTSPICEを使う際の参考WEB情報をまとめてあります。参考まで。

 

4.DCブースト回路のLED駆動

 以上説明したように低い電池電圧でもDCブースト回路を使用するとLEDが駆動できる電圧を作り出せます。この回路を使用するときの注意事項は次です。

@LEDにはダイナミック点灯と同じようにピーク電流点灯となります。従って、LEDのピーク電流定格に注意し、流す電流をチェックしておく必要があります。データシートにはIf:順方向定格電流とIfp:定格ピーク電流(パルス巾、デューティの定義あり)が掲載されています。

AVfが定格約2.5VのLEDであっても2.2V付近から微かに光り始めます。従って電池電圧2.6Vの場合にはLEDは2個直列するのが好ましいです。乾電池だと3V以上となり、2個直列は必須です。

BPICでLED駆動する時には直列抵抗でLEDに流す電流動作点を決めます。しかしこの直列抵抗に無駄な電力を使うことになります。DCブースト回路では直列抵抗が不要なので、抵抗での消費分はなくなり、効率の良い電力消費となります。

CLED明るさを制御することもできます。LEDは電圧一定であり、電流変化させ明るさ変えるのは大変ですが、この回路ではスイッチングの周期を変えれば明るさが変わります。

D良いことずくめのDCブースト回路のようですが、欠点もあります。それはスイッチングノイズです。特にPICはノイズで影響があると誤動作するので、電源にはデカップリングコンデンサを入れます。

 

.5.ご注意

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(c) by nobcha 2011.03.12

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